この調査内容は、当時の総理府が公表したものである
財政構造改革に関する有識者アンケート調査(平成9年3月)
I 調査の概要
1 調査の目的
財政構造改革について,各界の有識者等を対象にアンケート調査を実施し,意見を聴取する。
2 調査項目
- 財政健全化目標への意識
- 歳出に対する考え方
- 地方財政の再建
3 調査対象者
全国の有識者等2,500人を調査対象とした。(下記参照)
<分 野> | <対象者数> |
学識者 | 500 |
マスコミ関係者 | 250 |
自由業者 | 250 |
上場企業等経営者・役員 | 500 |
中小企業経営者 | 500 |
各種団体役員 | 250 |
地方公共団体の首長等 | 250 |
4 調査時期
平成9年3月12日〜29日
5 調査方法
郵送法
6 調査実施委託機関
社団法人 新情報センター
7 回収結果
- 有効回収数(率) 1,725人(69.0%)
- 調査不能数(率) 775人(31.0%)
8 分野別回収結果
<分 野> | <有効回収数(率)> |
学識者 | 335(67.0%) |
マスコミ関係者 | 161(64.4%) |
自由業者 | 146(58.4%) |
上場企業等経営者・役員 | 411(82.2%) |
中小企業経営者 | 330(66.0%) |
各種団体役員 | 160(64.0%) |
地方公共団体の首長等 | 179(71.6%) |
II 調査結果の概要
1 財政再建の考え方
(1) 財政健全化目標
問1 | 政府の財政健全化目標では,「2005年度までのできるだけ早期に,国及び地方の財政赤字をGDP(国内総生産)の3%以下」を達成した後,「速やかに公的債務残高が累増しない財政体質を構築」することを目指すこととしていますが,これに関してどのように考えますか。次の中からあなたのお考えに最も近いものを1つお選びください。 |
| 1 | 2005年度までのできるだけ早期に国及び地方の財政赤字3%以下を達成し,その後速やかに公的債務残高が累増しない財政体質を構築することを目指すという目標が適当である |
| 2 | 国及び地方の財政赤字3%以下を達成する目標年次を2005年度までに定めるのではなく,その時々の経済情勢等を考慮して2005年度以降に設定してもよいと考える |
| 3 | 米国が2002年,英国が今世紀中に財政収支均衡を目指していることを考えると,我が国も2005年度までのできるだけ早期に国及び地方の財政赤字を3%以下とするのではなく,2005年度までのできるだけ早期に最終的な目標である公的債務残高が累増しない財政体質の構築を目指すべきである
| | 4 | その他( ) |
|
(注)ここでの政府の財政健全化目標とは,財政再建の目標年次が2003年に前倒しされる前のものである。
(注)*は,選択肢を一部省略していることを表す(以下,同様)
(2) 歳出削減と租税負担の増加
問2 | 財政健全化目標達成のために何を重視すべきだと思いますか。次の中からあなたのお考えに最も近いものを1つお選びください。 |
| 1 | 租税負担の増加は避けるべきであり,徹底した歳出の削減を図るべきだ |
| 2 | 歳出削減を優先すべきであるが,財政健全化目標の達成のためには,ある程度の租税負担の増加もやむを得ない |
| 3 | その他( ) |
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(3) 景気対策としての財政政策
問3 | 景気対策としての財政政策について,あなたはどのようにお考えですか。次の中からあなたのお考えに最も近いものを1つお選びください。 |
| 1 | 経済状況によっては必要に応じ,景気対策としての財政政策も講ずるべきである |
| 2 | 景気対策としては,欧米諸国と同じように財政政策は行わず,金融政策で対応するべきである |
| 3 | 景気対策は必要だが,恐慌やデフレスパイラルなどの経済状況が相当程度深刻な場合にのみ財政政策を行うべきである |
| 4 | その他( ) |
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2 社会保障関係費
(1) 社会保障関係費
問4 | 急速な少子高齢化が進展する中で,給付と負担の均衡がとれた社会保障を実現するために社会保障構造改革を進めることが必要であると考えられますが,社会保障関係費についてあなたはどのようにお考えですか。次の中からあなたのお考えに最も近いものを1つお選びください。 |
| 1 | 公的サービスは基礎的な給付に限定し,自己選択,自己責任による民間サービスをより活用することが望ましい |
| 2 | 高い福祉を維持するためには,国などが相応の高い負担をすることもやむを得ない |
| 3 | その他( ) |
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(2) 国民医療費と負担の在り方
問5 | 現在,国民医療費の国民所得に対する割合は7%程度であり,アメリカ(13%程度),フランス(12%程度),ドイツ(11%程度)よりは低い水準です。しかし,高齢化の進展とともに,この割合は,日本では急速に上昇し,2025年には欧米諸国をはるかに超えて20%近くなるとの推計もあります。今後,必要な医療を確保するための負担はどのようにすべきだとお考えですか。次の中からあなたのお考えに最も近いものを1つお選びください。 |
| 1 | 保険料負担の引上げ |
| 2 | 受益者(患者)負担の引上げ,医療提供体制や診療報酬の見直し等による医療費の効率化 |
| 3 | 公費(税負担)の増加 |
| 4 | 1と2の両方 |
| 5 | 1と3の両方 |
| 6 | 2と3の両方 |
| 7 | 1と2と3のすべて |
| 8 | その他( ) |
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(3) 医療保険制度の構造改革
問6 | 現在,医療費は年率約6%で増大しているのに対して,保険料の基礎となる経済成長率はこれをかなり下回るため,医療保険は各制度とも構造的な赤字体質に陥り,危機的な状況にあります。国民皆保険の下,21世紀にも国民が安心して良質かつ効率的な医療を受けることができるように医療保険の構造改革を進めることが必要と考えられます。その様な改革の第1段階として,平成9年度には,破綻に瀕した医療保険財政を建て直し,世代間の負担の公平を図る観点から,患者負担の見直しを中心とする改革が予定されています。
(参考)平成9年度の医療保険制度改革の概要(政府案)
1 患者負担の見直し
〔現行〕 〔改革後〕
外来 月額 1,020円 → 受診毎に 500円 (月に4回まで)
・ 老人〔
入院 日額 710円 → 日額 1,000円
(低所得者は日額 300円 → 日額 500円)
・ 被用者本人 1割 → 2割
・ 薬剤 別途の患者負担はなし 外来で薬剤を受ける際,1種類1日分につき15円
2 政府管掌健康保険の保険料引上げ
8.2% → 8.6% (労使折半)
医療保険制度の構造改革に関し,あなたのお考えに最も近いものを次の中から1つお選びください。 |
| 1 | 今回の改革ぐらいの患者負担の引上げは必要である |
| 2 | 更なる患者負担の引上げが必要である |
| 3 | 患者負担の引上げはこれぐらいでよいが,医療供給体制や診療報酬・薬価基準の見直しやその支払い方式の見直し等も行う必要がある |
| 4 | 更なる患者負担の引上げと,医療供給体制や診療報酬・薬価基準の見直しやその支払い方式の見直し等を行う必要がある |
| 5 | 患者負担の引上げには反対であり,その前に医療供給体制,診療報酬・薬価基準の見直しやその支払い方式の見直し等が不可欠である |
| 6 | その他( ) |
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(4) 年金の給付水準と負担水準
問7 | 年金については,少子・高齢化の進展により,将来の世代はより少ない人数でより多くの高齢者への給付をしなくてはならないことから,給付水準によっては,将来の世代の負担が極めて重くなります。そして,現在の厚生年金の保険料率は17.35%であり,将来的には30%以上に引き上げることが必要になるという見方もあります。年金の給付水準と負担水準について,あなたはどのようにお考えですか。次の中からあなたのお考えに最も近いものを1つお選びください。 |
| 1 | 将来の世代が極めて重い負担をせざるを得なくとも,より充実した給付水準を実現することが望ましい |
| 2 | 将来の世代が重い負担をせざるを得なくとも,現在の給付水準を維持することが望ましい |
| 3 | 将来の世代の負担を軽減するため,給付水準を抑制することが望ましい |
| 4 | その他( ) |
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3 公共投資
(1) 公共投資の在り方
問8 | 我が国の公共投資(フロー)の水準は,諸外国と比べ高いものとなっていますが,公共投資について,次の中からあなたのお考えに最も近いものを1つお選びください。 |
| 1 | 我が国の社会資本整備(ストック)の水準は依然として諸外国に比べて低く,他方,本格的な高齢化社会を間近に控え,人口構成が若く,経済に活力のある現在のうちに,社会資本整備の水準(ストック)を向上させる必要があると考えられるので,少なくとも当面は,現在程度の水準を維持すべきである |
| | 2 | 厳しい財政事情を踏まえれば,公共投資を重点化・効率化し,国民経済全体とバランスのとれた姿となるよう見直していくべきである |
| | 3 | その他( ) |
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(2) 重点的に投資すべき項目・投資を抑制すべき項目
問9 | 財政事情が厳しくなる中でますます重点的・効率的な社会資本の整備が求められているものと考えられますが,今後,特に重点的に投資すべき分野及び抑制すべき分野についてあなたのお考えに最も近いものを次の中からそれぞれ順に3つ選び,下の回答欄に番号を記入してください。 |
| 1 | 洪水の被害を防ぐための河川の堤防・ダムの整備 |
| 2 | 河川の環境整備(水質の浄化,緑地整備等) |
| 3 | 市街地における床上浸水被害の解消対策 |
| 4 | 渇水対策としてのダム整備 |
| 5 | 土砂崩壊策(土砂流出,土石流,火山による土砂流出の防止) |
| 6 | がけ崩れ等による被害を防止するための急傾斜地崩壊対策 |
| 7 | 山地崩壊対策(山地における土砂流出等の防止,荒廃地の復旧) |
| 8 | 保安林の整備(水源涵養等の効果の大きい森林の整備) |
| 9 | 津波等から防護するための海岸施設(堤防・護岸等)の整備 |
| 10 | 自然環境に配慮した利用しやすい海岸の整備 |
| 11 | 高速道路等全国的な交流ネットワークを形成する高規格幹線道路の整備 |
| 12 | 歩道の整備,交差点の改良等の生活関連道路の整備 |
| 13 | 渋滞対策としてのバイパスの整備等の一般の道路改良 |
| 14 | 外国貿易等のための拠点的な役割を果たす港湾の整備 |
| 15 | 地方の港湾の整備 |
| 16 | 水産物の陸揚,流通・加工,資源管理等の拠点としての役割を果たす漁港の整備 |
| 17 | 地方の漁港の整備 |
| 18 | 漁村の生活環境の整備(集落排水施設等の整備) |
| 19 | 国際空港・拠点空港の整備 |
| 20 | 地方の空港の整備 |
| 21 | 公営住宅等公的住宅の整備 |
| 22 | 住宅金融公庫の融資の推進 |
| 23 | 市街地の整備(市街地再開発・区画整理等) |
| 24 | 都市部における下水道の整備 |
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