2 調査結果の概要
- 野生生物の保護と対策に関する意識について
(1) 多種多様な生物が生息できる環境の保全
現在,地球上に生息している多種多様な生物を適切に保全する「生物多様性の保全」の取組がすすめられているが,多種多様な生物が生息できる環境を保全することについてどのように考えるか聞いたところ,「人間の生活がある程度制約されても,多種多様な生物が生息できる環境の保全を優先する」と答えた者の割合が35.0%,「人間の生活が制約されない程度に,多種多様な生物が生息できる環境の保全を進める」と答えた者の割合が57.2%,「生活の豊かさや便利さを確保するためには,多種多様な生物が生息できる環境が失われてもやむを得ない」と答えた者の割合が2.2%となっている。
性別に見ると,「人間の生活がある程度制約されても,多種多様な生物が生息できる環境の保全を優先する」と答えた者の割合は男性で高くなっている。
年齢別に見ると,「人間の生活がある程度制約されても,多種多様な生物が生息できる環境の保全を優先する」と答えた者の割合は20歳代,30歳代で,「人間の生活が制約されない程度に,多種多様な生物が生息できる環境の保全を進める」と答えた者の割合は50歳代で,それぞれ高くなっている。(図14,表14)(2) 多種多様な生物の生息を保全するための対策
多種多様な生物の生息を保全するために,どのような対策が必要だと思うか聞いたところ,「保護地域を指定するなどして,野生生物の生息地の開発を規制する」を挙げた者の割合が36.3%,「野生生物の捕獲や採取を規制する」を挙げた者の割合が35.6%と高く,以下,「絶滅のおそれのある野生生物の繁殖を促進するため,実のなる木を植えるなどの生息地の改善を進める」(28.4%),「公共事業を行う際,野生生物の生息状況に配慮する」(21.6%),「農薬や化学肥料の使用を少なくするなど多種多様な生物の生息に配慮した農林業を進める」(20.3%)などの順となっている。(2つまでの複数回答)
前回の調査結果と比較して見ると,「野生生物の捕獲や採取を規制する」(32.3%→35.6%),「公共事業を行う際,野生生物の生息状況に配慮する」(19.3%→21.6%)を挙げた者の割合が上昇している。(図15)
都市規模別に見ると,「野生生物の捕獲や採取を規制する」を挙げた者の割合は町村で,「公共事業を行う際,野生生物の生息状況に配慮する」を挙げた者の割合は中都市で,「農薬や化学肥料の使用を少なくするなど多種多様な生物の生息に配慮した農林業を進める」を挙げた者の割合は小都市で,それぞれ高くなっている。
性別に見ると,「保護地域を指定するなどして,野生生物の生息地の開発を規制する」を挙げた者の割合は男性で,「絶滅のおそれのある野生生物の繁殖を促進するため,実のなる木を植えるなどの生息地の改善を進める」,「農薬や化学肥料の使用を少なくするなど多種多様な生物の生息に配慮した農林業を進める」を挙げた者の割合は女性で,それぞれ高くなっている。
年齢別に見ると,「保護地域を指定するなどして,野生生物の生息地の開発を規制する」を挙げた者の割合は40歳代で,「野生生物の捕獲や採取を規制する」を挙げた者の割合は70歳以上で,「絶滅のおそれのある野生生物の繁殖を促進するため,実のなる木を植えるなどの生息地の改善を進める」を挙げた者の割合は30歳代で,それぞれ高くなっている。(表15)(3) 絶滅のおそれのある野生生物の保護
イリオモテヤマネコ、シマフクロウなどの絶滅のおそれのある野生生物の保護について、どのような対策が必要だと思うか聞いたところ,「保護地域を指定し、生息地の開発等を規制する」を挙げた者の割合が56.3%,「捕獲・採取や譲渡等を法的に規制する」を挙げた者の割合が55.5%と高く,以下,「生息環境の改善や、回復事業を行う」(30.7%),「野生状態での生息数の回復が進まないものは、人工繁殖により数を増やすようにする」(20.8%)などの順となっている。(複数回答,図16,参考)
都市規模別に見ると,「保護地域を指定し、生息地の開発等を規制する」,「生息環境の改善や、回復事業を行う」を挙げた者の割合は大都市で高くなっている。
性別に見ると,「保護地域を指定し、生息地の開発等を規制する」,「野生状態での生息数の回復が進まないものは、人工繁殖により数を増やすようにする」を挙げた者の割合は男性で高くなっている。
年齢別に見ると,「生息環境の改善や、回復事業を行う」を挙げた者の割合は40歳代で高くなっている。(表16)(4) 被害を与える野生生物への対策
人間の生活に被害を与えることのあるカモシカやニホンザルなどの野生生物に対して,どのような対策をとったらよいと思うか聞いたところ,「被害があれば防護柵などを作って防ぐべきである」と答えた者の割合が37.0%,「防護柵などを作っても被害があれば必要最小限の駆除もやむを得ない」と答えた者の割合が34.1%と高く,以下,「被害を与える野生生物はただちに捕獲し,被害が生じない場所に移動させるなどの措置をとる」(14.7%)などの順になっている。
前回の調査結果と比較して見ると,「被害があれば防護柵などを作って防ぐべきである」(31.8%→37.0%)と答えた者の割合が上昇し,「被害を与える野生生物はただちに捕獲し,被害が生じない場所に移動させるなどの措置をとる」(18.7%→14.7%)と答えた者の割合が低下している。(図17)
都市規模別に見ると,「被害を与える野生生物はただちに捕獲し,被害が生じない場所に移動させるなどの措置をとる」と答えた者の割合は小都市で高くなっている。
性別に見ると,「被害があれば防護柵などを作って防ぐべきである」と答えた者の割合は女性で,「防護柵などを作っても被害があれば必要最小限の駆除もやむを得ない」と答えた者の割合は男性で,それぞれ高くなっている。
年齢別に見ると,「被害があれば防護柵などを作って防ぐべきである」と答えた者の割合は20歳代で,「防護柵などを作っても被害があれば必要最小限の駆除もやむを得ない」と答えた者の割合は60歳代で,それぞれ高くなっている。(表17)(5) 野生生物による被害の防止対策の費用負担
農山村地域では,カモシカやニホンザルなどの野生生物による農林作物などへの被害が増えており,その対策が大きな負担となっているが,これらの被害を防止するために行う防護柵の設置や駆除などの費用負担はどうあるべきだと思うか聞いたところ,「個人の財産を守るのだから,農家などが自ら負担すべきである」と答えた者の割合が4.1%,「農家などが自ら負担するのが原則であるが,それには限度があるので,費用の一部を国や地方公共団体で負担するのはやむを得ない」と答えた者の割合が51.0%,「野生生物は国民共有の財産であるので,その保護や管理のための費用は国や地方公共団体で負担すべきである」と答えた者の割合が38.9%となっている。
前回の調査結果と比較して見ると,大きな変化は見られない。(図18,表18)
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